トッケイの丘

島の風景色々ガベン編

ガベンと言うお祭りの存在を知ったのは、初めてバリ島を訪れたときのこと。 お決まりの観光コースでウブドへ行ったときに、画家の卵だと言うインドネシア（だと思う）の若い男性に、 「明日、ここでガベンがあるから、観においでよ」 と誘われたのでした。 しかし、残念なことに、その日の夜、帰国の途につく私たち。 「残念。今日帰るから、明日は来られないの」「えーっ！？折角のガベンなのに、勿体無い！」 「うん。残念…。ところで“ガベン”って何？」 間抜けな質問をした私に、彼はにこやかに笑いながらこう答えました。 「ガベンと言うのは、お葬式。バリでは皆で死者が祖霊になるのを祝うんだよ」 と。 皆で祝うお葬式？ お葬式といえば、哀しい物だと信じて疑わなかった私には、その意味が直ぐに理解出来ませんでした。 確かに神になるのは喜ばしいことなのかもしれません。でも… バリ島では人が生まれてから死ぬまで、様々な儀式があります。 ガベンは人としての最後の儀式。 遺体を灰にすることにより、霊を浄化し、祖霊神の位置に高める為の、大切な儀式。 ただ、火葬は費用が嵩むので、家族が亡くなった際、一度土葬をして費用を貯めてから、再び遺体を掘り起こし、火葬祭を執り行なうそうです。 祖先を崇め奉る為にお金を貯める… 嘗て、ある人が言っていた 「貧しいのは、皆働いて得たお金を、神様とのお祭りの為に全てを使ってしまうから」 と言う言葉を思い出し、ガベンに対する興味がむくむくと湧いてきました。 一度で良いからガベンを観てみたい。と… 毎年、毎年、訪問する度に、現地の人に“どこかでガベンは無い？”と訊き続け、漸く今年、その機会に巡りあえたのです！ ――ガベン 亡くなった方をまったく知らない者さえも、快く受け入れてくれる、バリのお葬式。 想像を遥かに越える、華やかで厳かな式典。 バリ島の文化にまた一つ触れ、益々この島が好きになりました。